<相談内容>
会社経営者である私の父Aは、この度、亡くなりました。
相続人は、母B、私(長男)C、次男D、長女Eの4人ですが、私が、会社の後継者として安定的に経営に携われるよう、父は、公正証書遺言を作成してくれていました。
その遺言においては、具体的に列挙できなかった遺産については、「その余の財産は長男Cに相続させる。」旨の記載がありました。
ところが、父Aが遺言を作成後、亡くなる前に、Aの父Fが亡くなり、唯一の相続人であった父Aが、Fの不動産や預金一切を単独相続していました。
私は、父Aの遺言に「その余の財産は長男Cに相続させる。」旨の記載がある以上、父AがFから相続した不動産や預金も相続できると考えているのですが、問題ないでしょうか。
<解決>
この場合、Cにとっては、Fの不動産や預金も相続できればいうことはありません。
しかし、母B、次男D、長女Eにとっては、そのような結論は、不公平で、受け入れ難しいものとなるでしょう。
具体的には、B、D、Eは、、「その余の財産は長男Cに相続させる。」というのは、父Aが遺言を作成した当時、父Aが保有していた財産を意味するもので、Aが遺言作成後に、Fから相続した不動産や預金は含まない、Fの不動産や預金は、別途、B、C、D、Eで遺産分割協議の対象とするべきであると主張する可能性があります。
では、どちらの言い分が正しいのでしょうか。
どちらが正しいかについては、一刀両断的に答えを出すのは難しいといわざるをえません。
すなわち、双方が一歩も譲らなければ、結局、裁判でき決着をつけざるを得なくなります。
そうならないようにするためには、遺言の文言を工夫する必要があります。
例えば、「その余の財産は長男Cに相続させる。」に続けて、「その余の財産とは、本遺言書作成時に存在するものに限らず、本遺言書作成後に遺言者が取得したものすべてを含むのとする。」と書いておけば、長男Cが考えているようになるでしょう。
一方、「その余の財産は長男Cに相続させる。」に続けて、「本遺言書作成後に、遺言者が取得した財産については、法定相続分に従って、妻B、長男C、次男D、長女Eに相続させる。」と書いておけば、妻B、次男D、長女Eが考えているようになるでしょう。
もちろん、Aが遺言を作成した後に、新たな財産を取得した場合、その都度、遺言を書き換えることも考えられますが、公正証書遺言では、手数料もかかりますので、上記のように表現を工夫しておくことで、余計なトラブルを回避することもできます。
このように遺言は、文言の違いによって、結果が大きく異なりますので、自分の考えを正しく遺すために、遺言作成にあたっては、弁護士に相談されることをお勧めします。
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2013.04.30更新
遺言作成後の財産取得
投稿者:
2013.04.18更新
自筆証書遺言
<相談内容>
私には、妻と子供が2人いるのですが、家業を継がせるべく、長男に多くの遺産を残したいと考えています。
知人に相談したところ、そうしたいのなら、自分で遺言を書けばよいと言われたのですが、どのようにすればよいでしょうか。
<解決>
自分の手で作成する遺言のことを、自筆証書遺言(民法968条)といいます。
自筆証書遺言の形式的要件は以下のとおりです(民法968条1項)。
① 遺言者本人が全文を自書する。パソコン作成は認められません。
② 遺言者本人が日付を自書する。
③ 遺言者本人が氏名を自書する。
④ 押印する。
また、相続開始後(遺言者が亡くなった後)、家庭裁判所に申し立てて、検認という手続を経なければなりません。そして、封印のある遺言は、検認手続において、相続人または代理人の立ち合いがなければ、開封することができません(民法1004条)。
検認とは、相続人に、遺言があることを通知し、家庭裁判所において、その自筆証書遺言の確認をし、後日、変造・偽造がされないように、遺言書の形式、態様等を調査する手続ですが、遺言の内容に関する有効・無効の判断、記述内容の解釈を確定する手続ではありません。
また、検認をしなければ、制裁が科される場合もあります(民法1005条)。
このように、自筆証書遺言は、作成時の形式要件が細かく定められ、相続開始後は検認手続を経なければなりません。
そのため、後に、形式要件が満たされていない、遺言者本人が作成していない、真意ではない、記載内容の意味が明確ではないとして、相続人間で争いになることも少なくありません。
そうなっては、せっかく遺言を作成しても、元も子もありません。
そこで、当事務所では、遺言を作成するにあたっては、原則として、公正証書遺言を利用しています。公正証書遺言なら、作成時に、形式要件を誤ることもありませんし、検認手続も不要だからです。
また、記載内容に疑義が生じないようにするためにも、弁護士に相談・依頼いただき、明確な内容の公正証書遺言を作成していただくことが、適切だと思われます。
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投稿者:
2013.04.16更新
遺言作成後の推定相続人の死亡
<相談内容>
先日、私の父Aが亡くなりました。父は、公正証書遺言を作成しており、この度、その遺言の内容を確認したところ、「相続財産である土地建物を長男Bに相続させる」旨の記載がありました。
しかし、長男は、父が亡くなる2年前に亡くなっています。
相続人は、二男である私C、母D、先に亡くなった長男の長女(代襲相続人)Eの3人なのですが、この場合、遺言の「相続財産である土地建物を長男Bに相続させる」旨の記載は、どういう効果を持つのでしょうか。
<解決>
相続人となるべき人(推定相続人)が、遺言を作成した人より先に亡くなった場合、先に亡くなった人の代襲相続人に当該遺産を代襲相続させる旨の記載がない限り、原則として遺言の当該部分は効力を失います。
したがって、このケースでは、遺言の「相続財産である土地建物を長男Bに相続させる」旨の記載があるものの、長男Bが先に亡くなっていますので、この記載は効力を失い、長男の長女(代襲相続人)Eは、当該土地建物全部を単独相続できないのが原則です。
しかし、例外的に、当該遺言書の他の記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、先に亡くなった方の代わりに、代襲相続人その他の者に当該遺産を相続させる意思を有していたとみるべき特段の事情がある場合は、代襲相続が認められます。
よって、このケースでも、遺言者である父Aが、先に亡くなった長男Bに代わって長女E(代襲相続人)に、当該土地建物を単独相続させる意思を有していたとみるべき特段の事情(長女Eが父A、母Dと同居し、面倒を見ていた、他の遺産は、母Dと二男Cが相続することになっていたなど)があるときは、長女Eは、遺言の効力として当該土地建物を単独相続することができます。
もっとも、特段の事情の有無は微妙な判断となりますので、遺言書を作成後、推定相続人が先に亡くなられた場合は、改めて遺言を作成することをお勧めします。
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投稿者: