相談事例集

2013.02.24更新

<相談内容>
 この度、母が亡くなり(父は先に他界しています。)、長女である私と長男が、母の遺産を相続することになりました。

 母には不動産や金融資産がありましたが、その他に、長男が、母を被保険者とする生命保険の保険金受取人になっており、相当の保険金を受け取ることになりました。

 母は遺言を作成していなかったのですが、長女である私と長男で行う遺産分割協議において、長男が保険金を受け取ったことを法的に考慮することはできないのでしょうか。

<解決>
 被相続人を被保険者とし、相続人の1人を受取人とする生命保険金は、遺産に含まれません

 したがって、相続人の1人が生命保険金を受け取ったことは、遺産分割協議において、法的に考慮されないのが原則です。

 しかしながら、この原則を貫くと、相続人間で実質的に不公平が生じることがあります。ご相談の事例でも、例えば、保険金が3000万円、遺産総額が2000万円であれば、長男は保険金3000万円と遺産の2分の1相当である1000万円の合計4000万円相当を手にするのに対し、長女は遺産の2分の1相当である1000万円相当しか手にすることができません。

 この点に関し、近時、最高裁判所が、不公平の是正の余地を認めた、次のような決定を下しました。

 「(中略)保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当である。上記特段の事情の有無については、保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人との関係、被相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである。」

 したがって、ご相談のケースでも、長男が受け取る保険金の額、それが遺産全体に占める割合、長男と母が同居であったか、長男が介護をしていたか、長女の介護への貢献等を総合的に判断して、当該保険金が特別受益に準ずるものとして、遺産分割協議で、法的に考慮される余地はあるといえます。

投稿者: シリウス法律事務所事務所

2013.02.21更新

<相談内容>
 今般、私の父が亡くなり、相続人である兄及び母と遺産分割協議をすることになりました。
 

 父は不動産(収益物件)を所有していたのですが、父が亡くなって半年たった今でも、賃料収入を、母と兄が独占しています。

 遺産分割協議が長引けば、それだけ賃料収入を母と兄が独占することになり、私には1円も入ってきませんので、不公平と思います。

 このような場合、私はどうすることもできないのでしょうか。

 なお、遺言はありません。

<解決>
 相続開始後に、遺産である不動産から生じた賃料債権のことを、法律用語で果実(かじつ)といいます。
 

 そして、このような果実は、遺産として遺産分割協議の対象とはならず、法定相続分に従って、各相続人が分割債権として確定的に取得するというのが、最高裁判所の考えです。
 

 例えば、本件で、相続開始後、毎月500,000円の賃料債権が発生するとした場合、母(法定相続分2分の1)が250,000円、兄と弟である相談者(法定相続分各4分の1)が、125,000円ずつ取得することになります。

 そうすると、相談者から見れば、毎月の自分の取得分として125,000円があるのに、その分まで母と兄が独占していることになり、これを返してもらいたいと思うのも当然です。
 

 しかし、上記の最高裁判所の考えからは、相談者は、この点に関しては、遺産分割調停ではなく、民事訴訟を提起して、不当利得して、母及び兄に返還を求めざるを得ないのが原則です。

 もっとも、遺産分割協議が進んでいる中、このような相談者が、別途民事訴訟を提起しなければならないというのは、いかにも迂遠ですので、母及び兄が同意するなら、遺産分割協議の中で、相続開始後に生じた賃料債権についても、協議して決めることは可能です。

 ただ、遺産分割協議が進んでいる最中に、母や兄が、独占した賃料を使い果たし、協議がまとまった時には、その清算が困難になるよう場合は、審判前の保全処分として、家庭裁判所に、遺産管理者の選任を申し立て、選任された遺産管理者に収益物件の賃料管理を委ねるのが安心です。

投稿者: シリウス法律事務所事務所

2013.02.20更新

<相談内容>
 私は、父の遺産相続に関し、妹及び弟を相手に、家庭裁判所で遺産分割調停手続を進めています。
 父の遺産には、土地もあり、この土地をどうするかについて、私たち3人の考え方がまとまらず、調停開始から1年を過ぎています。
 このまま、話がまとまらなかったら、遺産分割調停はどうなるのでしょうか。
 なお、母は父より先に他界しており、父の相続人は私たち3人だけです。

<解決>
 遺産分割調停がまとまらなければ、調停は不成立となり、審判に移行します。
 審判とは、審判官(裁判官)が、当該遺産を、このように分けるべしと命ずる手続です。

 審判により土地を分ける場合、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割の4種類の方法があります。

 現物分割は、文字通り、一筆の土地を分筆して、分筆された土地を相続人で分ける方法です。
 土地は様々な形状ですから、分筆後の土地が、経済的にも物理的にも等しい価値であるとは限りません。
 また、もともと、一筆の土地として価値があったものを分筆するわけですから、小分けされた土地の価値をあわせても、もの一筆の土地の価値に及ばないことも多々あります。
 ですので、そう簡単には、現物分割はできません。

 代償分割は、例えば、相続人の1人が土地全部を相続する代わりに、土地を相続した相続人が他の相続人にお金を払って、取りすぎた分を清算する方法です。
 土地全部を相続した相続人に、代償金を支払う資力があり、他の相続人が土地自体を相続することにこだわりがなければ、代償分割は適しているといえます。
 逆に、代償金を準備できなければ、この方法をとることも困難となります。

 換価分割は、遺産である土地をお金に換える、すなわち、競売によって土地を売却し、その売却益を相続人でわける方法です。
 相続人全員が、土地に対するこだわりをもっていなければ、この方法によることもできますが、競売では、通常の不動産取引(任任意売却)と異なり、売却価格(落札価格)が低額になってしまう傾向がある点に注意しておく必要があります。
 要は、相続人全員が、土地にこだわりがなければ、全員で土地を、通常の不動産取引で売却した方が、お得であることが多いため、わざわざ審判にするまでもなく、調停で合意しておくべきということになるのです。

 共有分割は、土地を相続人の共有とする方法です。
 あくまで、共有のままですので、実質的には何の解決にもなりません。

 以上のように見ると、調停が不成立になった後、手続きとしては審判に移行するものの、そこで決められる分割方法は、必ずしも相続人全員にとって有利なものではなく、経済的には損をすることさえあります。

 遺産分割協議においては、感情の対立が生じることもありますが、相続人それぞれが譲歩しなければ、最後には、審判になってしまい、それぞれが損をすることもありますので、その点も加味して、妥協点を探っていくことも重要です。

投稿者: シリウス法律事務所事務所

2013.02.18更新

<相談内容>
 この度、私の父が亡くなり(母は先に他界しています。)、長男である私が喪主を務め、父の葬儀を執り行いました。したがって、葬儀費用150万円を、一旦、私が立て替えて支払いました。香典は辞退しています。

 
 これから、私は、妹及び弟と、父の遺産に関する分割協議をするのですが、この遺産分割協議において、葬儀費用を考慮してもらうことができるでしょうか。
 なお、遺言書はありません。

<解決>
 葬儀費用については、被相続人が亡くなってから発生したものであるため、相続債務とはなりません。

 ですから、被相続人の生前に発生した債務と異なり、当然に、遺産分割協議の対象となるものではありません。

 ただ、相続人全員で合意し、遺産分割の対象として考慮することにしたのなら、そのように処理することに何ら問題はありません。

 したがって、喪主として葬儀費用を立て替えて支払う立場になるのなら、後に、他の相続人の理解を得られるように、葬儀の規模、方法等について、他の相続人に相談して意見を取り入れたり、請求明細を残しておくなどしておくことが賢明です。

 仮に、その体裁、出席者からして、被相続人の葬儀というより、喪主のための葬儀ということになれば、他の相続人の理解を得られず、立て替えて支払った葬儀費用を、遺産分割協議の対象とすることは困難となるでしょう。

 ご相談者の場合、葬儀費用は150万円であり、著しく高額とまではいえないと思われます。

 したがって、経緯や請求明細等も考慮した結果、相談者のお父上にとって、分相応なものであれば、他の相続人に遺産分割協議の対象とすることの理解を求め、その点を含めて、遺産分割協議の成立を目指すべきです。

 また、仮に、遺産分割協議が不成立となり、遺産分割審判によらなければならないことになっても、少なくとも、葬儀費用もその対象とすることの合意を得ておくべきです。

 そのような合意がなければ、遺産分割審判では、葬儀費用は、審判の対象となりませんので注意が必要です。

投稿者: シリウス法律事務所事務所

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